山の奥に2人の兄弟が住んでいました。
兄のリクは体の弱い弟ルートの薬を買うために毎日働いていました。
「ルート、今日もちゃんとおとなしく寝ているんだよ。」
「うん。」
いつもと同じ日常。いくら薬を買って弟のルートに薬を飲ませても、こんな安い薬じゃ・・・。父さんと母さんが生きていてくれれば・・・。
「リク兄ちゃん。」
「どうした?」
「・・・ううん。頑張ってね。」
「おう!じゃ行ってくる。」
「海・・・久しぶりに行きたいな。」
ルートの呟きは誰にも聞かれることはなかった。
「ただいま。」
「お帰り。」
家に入ると台所に立っているルートの姿があった。
「ルート!お願いだから寝ていてくれよ。」
「ヤダよ!僕だってリク兄の役に立ちたいよ。」
「・・・お前までいなくなると・・・兄ちゃん・・・一人ぼっちになっちゃうだろ?」
「大丈夫。僕はリク兄の前からいなくならないよ?」
笑顔で答えるルート。
「さ、後は兄ちゃんに任せて、ルートは寝てろ。」
「・・・うん。そうだね。今日は検査の日だからね。」
「ありがとうございました。」
「・・・少し時間をいただけますか?」
「・・・はい。」
少し胸騒ぎがした。
「弟ルート君の話なんだけども・・・。」
「・・・はい。分かっています。」
「もう・・・長くはないと思われるんだ。」
覚悟はしていたはずなのに・・・ショックだった。
「・・・。」
言葉が出てこない。
「リク君・・・。」
心配そうに名を呼ぶ医者。
「・・・すみません。あと・・・どれくらいなんですか?」
「長くて・・・一週間もつかもたないか。」
「そ・・・んな。」
「!!!」
「!!!」
物音の方を見るとそこに弟のルートが立っていた。
「ルー・・・ト。」
「心配しないで?僕・・・分かってたから。自分の身体だし。」
「ルート。」
こんな時でもリクに笑顔を見せるルートを優しく抱きしめるリク。
「なんで・・・なんでルートなんだよ。」
「リク兄。僕・・・行きたい場所があるんだ。」
「・・・どこだ?」
「海!」
リクは医者の方を見ると医者は笑顔で頷いた。
「リク兄。これからは一緒に寝よ?」
「そうだな。」
2人はベッドへ潜り込んだ。
「明後日に海、行こうな?」
「うん!」
この夜はどんどん咳が酷くなっていた。
次の日の仕事では泣くのを堪えるのに必死だった。
「大丈夫か?」
「うん。だって待ちに待った海だよ!?」
いつもよりは元気そうに見えるけれど、少し無理をしているようにも見えた。
「うわ~。海ってこんなにキレイだったっけ?」
ルートの目はキラキラ輝いていた。
「!!ルートここでじっとしてろよ?」
「え?うん。」
ルートを残しその場を離れてある場所へリクは向かった。
「僕はここに来れて、リク兄の弟として生まれてこれて嬉しかったよ。ありがとう。神様。」
海を眺めていると目の前にアイスが差し出され、そこにはアイスを銜えたリク兄が立っていた。
「わぁ~アイス!ありがとうリク兄!!」
久しぶりのアイスだからかとてもおいしそうに食べるルートを見て微笑むリク。
「懐かしいね。父さんたちと海に来た時と味・・・変わんないね。」
「ああ。」
「僕・・・もう少しで父さんたちに会えるんだね。」
「・・・!」
涙が出そうになる。けれどいい思い出として泣くわけにはいけない。
「今日は本当にありがとう。」
「じゃ今日は久しぶりの海に来た記念の写真を撮るぞ!」
“パシャ”
これがルートの最後の元気な姿だった。
この日から5日後、ルートは幸せな顔で静かに息を引き取った。
「父さん!母さん!どうしてルートまで・・・。」
ルートの墓の前で涙を流すリク。リクの前に影ができ、後ろを振り返ると、そこにはルートの掛かりつけの医者の姿があった。
祈りを捧げ立ち上がりリクを見る医者。
「今日は、リク君に渡したいものがあって来たんだ。」
「俺に・・・ですか?」
頷くと封筒を前に出し、それを受け取った。
「それはルート君からの手紙だよ。」
リクはゆっくり、丁寧に封筒の中身を取り出し読んでいく。
“リク兄へ
この手紙を読んでいるということは僕はリク兄の前からいなくなったってことだね。
とても優しいリク兄。
きっと僕のための涙を流してくれているよね?
でも、泣かないで。
僕はずっとリク兄の傍にいるから。
僕、リク兄の弟として生まれて良かったよ。
こんな優しい兄はリク兄しかいないよ。
僕の自慢の兄さん。
僕のためにいっぱい、いっぱい働いて薬を買ってくれてありがとう。
思い出を沢山、ありがとう。
僕を一番に思ってくれてありがとう。
ありがとう。
感謝でいっぱいだよ。
こんな弟を愛してくれてありがとう。
大好きなリク兄。
また、生まれ変わってもリク兄の弟でいたいよ。
リク兄が大好きな弟のルートより”
読み終わった途端、リクの目には涙が溜まっていた。
「ルート。・・・ルート。ルート!ルート!!」
ルートの墓に向き直るリク。
「俺も・・・俺も弟がルートでよかったよ!礼を言うのは俺の方だ!ありがとう!ルート!」
その日は真夏で暑く、青空いっぱいの空でした。
「ありがとう。リク兄。」
END
兄のリクは体の弱い弟ルートの薬を買うために毎日働いていました。
「ルート、今日もちゃんとおとなしく寝ているんだよ。」
「うん。」
いつもと同じ日常。いくら薬を買って弟のルートに薬を飲ませても、こんな安い薬じゃ・・・。父さんと母さんが生きていてくれれば・・・。
「リク兄ちゃん。」
「どうした?」
「・・・ううん。頑張ってね。」
「おう!じゃ行ってくる。」
「海・・・久しぶりに行きたいな。」
ルートの呟きは誰にも聞かれることはなかった。
「ただいま。」
「お帰り。」
家に入ると台所に立っているルートの姿があった。
「ルート!お願いだから寝ていてくれよ。」
「ヤダよ!僕だってリク兄の役に立ちたいよ。」
「・・・お前までいなくなると・・・兄ちゃん・・・一人ぼっちになっちゃうだろ?」
「大丈夫。僕はリク兄の前からいなくならないよ?」
笑顔で答えるルート。
「さ、後は兄ちゃんに任せて、ルートは寝てろ。」
「・・・うん。そうだね。今日は検査の日だからね。」
「ありがとうございました。」
「・・・少し時間をいただけますか?」
「・・・はい。」
少し胸騒ぎがした。
「弟ルート君の話なんだけども・・・。」
「・・・はい。分かっています。」
「もう・・・長くはないと思われるんだ。」
覚悟はしていたはずなのに・・・ショックだった。
「・・・。」
言葉が出てこない。
「リク君・・・。」
心配そうに名を呼ぶ医者。
「・・・すみません。あと・・・どれくらいなんですか?」
「長くて・・・一週間もつかもたないか。」
「そ・・・んな。」
「!!!」
「!!!」
物音の方を見るとそこに弟のルートが立っていた。
「ルー・・・ト。」
「心配しないで?僕・・・分かってたから。自分の身体だし。」
「ルート。」
こんな時でもリクに笑顔を見せるルートを優しく抱きしめるリク。
「なんで・・・なんでルートなんだよ。」
「リク兄。僕・・・行きたい場所があるんだ。」
「・・・どこだ?」
「海!」
リクは医者の方を見ると医者は笑顔で頷いた。
「リク兄。これからは一緒に寝よ?」
「そうだな。」
2人はベッドへ潜り込んだ。
「明後日に海、行こうな?」
「うん!」
この夜はどんどん咳が酷くなっていた。
次の日の仕事では泣くのを堪えるのに必死だった。
「大丈夫か?」
「うん。だって待ちに待った海だよ!?」
いつもよりは元気そうに見えるけれど、少し無理をしているようにも見えた。
「うわ~。海ってこんなにキレイだったっけ?」
ルートの目はキラキラ輝いていた。
「!!ルートここでじっとしてろよ?」
「え?うん。」
ルートを残しその場を離れてある場所へリクは向かった。
「僕はここに来れて、リク兄の弟として生まれてこれて嬉しかったよ。ありがとう。神様。」
海を眺めていると目の前にアイスが差し出され、そこにはアイスを銜えたリク兄が立っていた。
「わぁ~アイス!ありがとうリク兄!!」
久しぶりのアイスだからかとてもおいしそうに食べるルートを見て微笑むリク。
「懐かしいね。父さんたちと海に来た時と味・・・変わんないね。」
「ああ。」
「僕・・・もう少しで父さんたちに会えるんだね。」
「・・・!」
涙が出そうになる。けれどいい思い出として泣くわけにはいけない。
「今日は本当にありがとう。」
「じゃ今日は久しぶりの海に来た記念の写真を撮るぞ!」
“パシャ”
これがルートの最後の元気な姿だった。
この日から5日後、ルートは幸せな顔で静かに息を引き取った。
「父さん!母さん!どうしてルートまで・・・。」
ルートの墓の前で涙を流すリク。リクの前に影ができ、後ろを振り返ると、そこにはルートの掛かりつけの医者の姿があった。
祈りを捧げ立ち上がりリクを見る医者。
「今日は、リク君に渡したいものがあって来たんだ。」
「俺に・・・ですか?」
頷くと封筒を前に出し、それを受け取った。
「それはルート君からの手紙だよ。」
リクはゆっくり、丁寧に封筒の中身を取り出し読んでいく。
“リク兄へ
この手紙を読んでいるということは僕はリク兄の前からいなくなったってことだね。
とても優しいリク兄。
きっと僕のための涙を流してくれているよね?
でも、泣かないで。
僕はずっとリク兄の傍にいるから。
僕、リク兄の弟として生まれて良かったよ。
こんな優しい兄はリク兄しかいないよ。
僕の自慢の兄さん。
僕のためにいっぱい、いっぱい働いて薬を買ってくれてありがとう。
思い出を沢山、ありがとう。
僕を一番に思ってくれてありがとう。
ありがとう。
感謝でいっぱいだよ。
こんな弟を愛してくれてありがとう。
大好きなリク兄。
また、生まれ変わってもリク兄の弟でいたいよ。
リク兄が大好きな弟のルートより”
読み終わった途端、リクの目には涙が溜まっていた。
「ルート。・・・ルート。ルート!ルート!!」
ルートの墓に向き直るリク。
「俺も・・・俺も弟がルートでよかったよ!礼を言うのは俺の方だ!ありがとう!ルート!」
その日は真夏で暑く、青空いっぱいの空でした。
「ありがとう。リク兄。」
END
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