狐邑 祐一と春日 珠紀
祐一先輩は私の腕をとって、体を引き寄せ、何も言わず、私の唇に唇を合わせた。

優しく、暖かい感触がある。先輩の気持ちが、心の中に入り込んでくる。

閉じた目から、涙がこぼれるのがわかる。

一緒になれたのだと、心の底からそう思える。胸の中に優しくて温かくて、安心できる気持ちが広がっていく。

そして、私は、祐一先輩の心の中に、ゲントウカの心を感じる。

私は不意に気づく。私が玉依姫の魂を引き継いでいるように、祐一先輩が、ゲントウカの魂を引き継いでいるのだと。

今の私と、祐一先輩がそうであるように、お互いの温かみを通して、ゲントウカと玉依姫の心が交じり合っていくのを感じる。

千年前、玉依姫も、ゲントウカも、お互いをきっと愛していて、けれど、それぞれの役割から抜け出ることができなかった。

でも今、ようやく、私は感じる。先輩の想いと、ゲントウカの想いが一つになり、私自身と、自分の中にある玉依姫とが一つになる瞬間を。

ゲントウカが玉依姫と初めて出会ったこの場所で、ようやく二人が結ばれたことを私は知る。

先輩の温かさが心地よかった。悲しみはもうなく、先輩と一緒なら、どんなことでもできる気がする。

それから――。
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