狐邑 祐一と春日 珠紀
「ここからは、村の前傾が見わたせるんだな」

夕暮れの光が柔らかく全てを照らし出す中で、私たちは村を見つめる。

「・・・・こうやって見ると、意外と小さいんですね」

なんだかミニチュアみたいな村。ついこの間まで、ここには、世界を終わりにする刀が眠っていた。

でも今は、本当にただの、平和な村。

「またここに帰ってこよう。今度は、アリアとフィーアと一緒に」

祐一先輩はそう言ってくれた。その言葉に私はうなずく。

たくさんの、本当にたくさんのことがあって。でも今は静かに、夕暮れにまどろむような山間の村。

「短い間だったけど。なんだか、たくさんのことがありましたね」


「・・・・ああ、そうだな。俺にはおまえが泣いていた記憶しかないが」

祐一先輩はちょっと面白がるように言った。

「ム、なんですかそれ」

私はそう言って、でも優しい先輩の顔を見ていると、なんだか不愉快な気持ちも消えてしまった。

そう。確かに、つらくて、悲しくて、逃げ出したくなることがいっぱいあった。

でも。それを乗り越えてこれたのは・・・・。

「先輩、ありがとう。私、何度も先輩に助けられた」

「それは、俺のセリフだ。おまえの存在がなければ、俺はずっと、殻の中に閉じこもったままだった」

祐一先輩は優しい表情も、その白い髪も、今は夕暮れに美しく染まっている。

「これからも、俺はずっとおまえのそばにいよう」


「そうしてくれると嬉しいです」

私たちは、共に手を取り、村の外に出よう。これからずっと、一緒に全てを乗り越えていこう。

「遅い!遅すぎる!早く来なければ置いていくぞ!」


アリアの声が遠くから聞こえる。

「そろそろ行こう。アリアの気分を損ねる前に」

「そうですね。アリアて一度怒るとずーっと怒ってますもんね」

私たちはお互いに微笑みあって、また再びの一歩を、歩みだした。
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