出逢うべき出会い
「平助君大丈夫?」
「ああ、千鶴こそ大丈夫か?」
「うん。」
千鶴と平助は羅刹だけの国を創ると言っている山南さんを止めるために今、走り続けていた。
「に、しても・・・。」
2人を取り囲む羅刹たち。
「平助君。」
心配そうに名を呼ぶ千鶴。
「大丈夫だ。離れるなよ?」
「うん。」
「早くしてください!」
「うっせぇな!分かってるって。」
「真弘先輩が調べ物をしたいって言うからこうしておばあちゃんに見つからないように来てるのに・・・。」
「悪かったな。」
「え?」
「ほら、行くぞ!」
「ちょっ・・・ちょっと!」
「主来たれり。」
蔵の扉が開き埃っぽい中へ2人は入って行く。
「しっかし、相変わらず埃っぽいな。ここは。」
「そうですね。」
お互いそう言いつつもどうやってロゴスを倒すか、どうやって玉依姫の力を覚醒させるかを調べていた。
「ん?」
珠紀がある本に目をやる。
「藤堂・・・平助物語?」
パラパラとページをめくっていく。
「藤堂平助と雪村千鶴は羅刹に取り囲まれていた。千鶴が助けを願った途端光り、白い世界になり・・・きゃ!!」
本を読んでいた珠紀の目の前に丸い光の塊が現れ、そこには2人の人の姿があった。
「珠紀!?」
「真弘先輩。」
「誰だ。こいつら。」
「この本を読んでいたら・・・現れて。」
「とりあえずこのことをババ様に言って2人を家の中に入れてやれ。」
「はい。」
「ん?ここは・・・。」
辺りを見回す千鶴。
「ん~。」
声のする方へ目をやると、そこには平助の姿があった。
「へ、平助君。お、起きて!」
「ん~?あ?千鶴・・・。ってここ何処だよ!?羅刹は!?」
2人とも何が何だか分からずに動揺していた。そこにスッと襖が開き、女の子が顔を覗かせた。
「あら。珠紀様。お2人方目を覚ましましたよ。」
女の子はそう言うと千鶴たちに会釈をし、その場を離れて行った。
「平助君。」
心配そうに平助を見る千鶴。
「心配するな。何があっても俺がお前を守る。」
「ありがとう。」
安心からか、やわらかい笑顔が零れた。そんな和やかな時を邪魔するかのように、ドタドタと五月蝿い足音が聞こえ、平助は刀を構える。
「俺の後ろに。」
「うん。」
襖が開いたのを合図に平助は切りかかる。
「う、おう!」
その男は腕で平助が振りかざした刀を受け止めていた。
「なっ!」
「あっぶねぇな!!助けてやっていきなりこれかよ!」
「あー!真弘先輩!何やってるんですか!」
「ちげーよ!こいつらから切りかかってきたんだよ!」
子供くらいの男が女にギャーギャー喚いていた。
「ごめん。まさかこんな小さな子供だとは思わなくて・・・。」
「ま、真弘先輩。お・・・落ち着いて。冷静に・・・。」
「冷静でいられっかー!ガキ扱いすんな!」
「あの・・・助けていただいたみたいで・・・ありがとうございました。」
「助けたと言うか、私が本を読んでいたら貴方たちが現れて・・・。」
「で、俺がこいつに家へ連れて行けって言ったんだ。」
「でも、まさか男の人が2人も現れるなんて・・・しかも、その格好・・・昔の人っぽいし・・・。」
「え?ここって・・・江戸じゃないんですか?」
「え?ここは季封村ですけど・・・。」
「季・・・封村?」
「ど・・・どうしましょう。真弘先輩。」
「ど、どうするって・・・まずは自己紹介だろ?」
「あ。あの、私玉依姫の春日珠紀です。」
「俺様は、鴉取真弘様だ!」
「私は雪村千鶴と申します。」
「え?私?」
「男でも私って使うやついるだろ?」
馬鹿にするように答える真弘。
「あ!そっか。」
「俺は藤堂平助。よろしくな。」
「藤堂平助って、新選組最年少の!?」
「え?ああ。」
「おい、珠紀これ絶対・・・。」
「タイムスリップってやつですよね?」
「お、おう。」
「あの・・・。とりあえず、お風呂沸いているのでどうぞ。」
いきなり2人の後ろから、先ほどの女の子が現れた。
「あ、この子は・・・。」
「言蔵美鶴と申します。」
「私は雪村千鶴と申します。」
「俺は藤堂平助。」
「あの、少しお尋ねしますが、お2人は夫婦なのですか?」
「え?美鶴ちゃん?」
「美鶴、こいつら男だぞ?」
また馬鹿にするように言う真弘。
「いや、その・・・まだそういう関係じゃ・・・。」
「まだ?そうなんですか?どうなさいます?一緒の部屋にしたままでもよろしいですか?」
平助は千鶴を見る。
「・・・はい。」
平助は少し驚いた様子で千鶴を見ていた。
「え?千鶴さんって女だったの!?」
「気付いていなかったのですか?」
「う、うん。」
珠紀と真弘は頷いた。
「大丈夫だよ。俺も最初土方さんが言うまで気付かなかったし。」
「それでは私は、食事の準備がありますので。」
美鶴はその場を離れて行った。
「あの・・・今、私たちの村では鬼斬丸の件で大変な時なんです。2人に何かあっては大変なので、ここにいてくださいね?」
「はい。」
「平助君、お風呂いい・・・!平助君!!もしかして・・・。」
部屋の真ん中で平助は苦しそうに蹲っていた。
「大・・丈夫。」
「駄目だよ!っつ・・・私の血を・・・!」
「・・・ごめんな。・・千鶴。」
「ううん。平助君が生きててくれるなら、私何でもするよ?」
「ありがとう・・・。」
光が2人を包み込む。
「真、真弘先輩?!何覗いてるんですか?」
「ちが・・・うっ!!」
「な、何?!」
光が溢れ、次第に収まっていった。しかし、そこには2人の姿は無かった。
「戻って行ったみたいですね。」
「ああ。」
珠紀は2人に出会ったきっかけの本を開く。そこには、『2人は無事、山南さんの元へ行き説得はうまくいかなかったが、最後に昔の山南さんに戻り、羅刹の国は創られずに2人は静かに暮らしていった』と書き綴られていた。
「私たちも諦めずに玉依姫として覚醒できるように頑張りましょう!」
「それでこそ珠紀だな!」
2人は自分たちの未来のために歩き出したのだった。
end
「平助君大丈夫?」
「ああ、千鶴こそ大丈夫か?」
「うん。」
千鶴と平助は羅刹だけの国を創ると言っている山南さんを止めるために今、走り続けていた。
「に、しても・・・。」
2人を取り囲む羅刹たち。
「平助君。」
心配そうに名を呼ぶ千鶴。
「大丈夫だ。離れるなよ?」
「うん。」
「早くしてください!」
「うっせぇな!分かってるって。」
「真弘先輩が調べ物をしたいって言うからこうしておばあちゃんに見つからないように来てるのに・・・。」
「悪かったな。」
「え?」
「ほら、行くぞ!」
「ちょっ・・・ちょっと!」
「主来たれり。」
蔵の扉が開き埃っぽい中へ2人は入って行く。
「しっかし、相変わらず埃っぽいな。ここは。」
「そうですね。」
お互いそう言いつつもどうやってロゴスを倒すか、どうやって玉依姫の力を覚醒させるかを調べていた。
「ん?」
珠紀がある本に目をやる。
「藤堂・・・平助物語?」
パラパラとページをめくっていく。
「藤堂平助と雪村千鶴は羅刹に取り囲まれていた。千鶴が助けを願った途端光り、白い世界になり・・・きゃ!!」
本を読んでいた珠紀の目の前に丸い光の塊が現れ、そこには2人の人の姿があった。
「珠紀!?」
「真弘先輩。」
「誰だ。こいつら。」
「この本を読んでいたら・・・現れて。」
「とりあえずこのことをババ様に言って2人を家の中に入れてやれ。」
「はい。」
「ん?ここは・・・。」
辺りを見回す千鶴。
「ん~。」
声のする方へ目をやると、そこには平助の姿があった。
「へ、平助君。お、起きて!」
「ん~?あ?千鶴・・・。ってここ何処だよ!?羅刹は!?」
2人とも何が何だか分からずに動揺していた。そこにスッと襖が開き、女の子が顔を覗かせた。
「あら。珠紀様。お2人方目を覚ましましたよ。」
女の子はそう言うと千鶴たちに会釈をし、その場を離れて行った。
「平助君。」
心配そうに平助を見る千鶴。
「心配するな。何があっても俺がお前を守る。」
「ありがとう。」
安心からか、やわらかい笑顔が零れた。そんな和やかな時を邪魔するかのように、ドタドタと五月蝿い足音が聞こえ、平助は刀を構える。
「俺の後ろに。」
「うん。」
襖が開いたのを合図に平助は切りかかる。
「う、おう!」
その男は腕で平助が振りかざした刀を受け止めていた。
「なっ!」
「あっぶねぇな!!助けてやっていきなりこれかよ!」
「あー!真弘先輩!何やってるんですか!」
「ちげーよ!こいつらから切りかかってきたんだよ!」
子供くらいの男が女にギャーギャー喚いていた。
「ごめん。まさかこんな小さな子供だとは思わなくて・・・。」
「ま、真弘先輩。お・・・落ち着いて。冷静に・・・。」
「冷静でいられっかー!ガキ扱いすんな!」
「あの・・・助けていただいたみたいで・・・ありがとうございました。」
「助けたと言うか、私が本を読んでいたら貴方たちが現れて・・・。」
「で、俺がこいつに家へ連れて行けって言ったんだ。」
「でも、まさか男の人が2人も現れるなんて・・・しかも、その格好・・・昔の人っぽいし・・・。」
「え?ここって・・・江戸じゃないんですか?」
「え?ここは季封村ですけど・・・。」
「季・・・封村?」
「ど・・・どうしましょう。真弘先輩。」
「ど、どうするって・・・まずは自己紹介だろ?」
「あ。あの、私玉依姫の春日珠紀です。」
「俺様は、鴉取真弘様だ!」
「私は雪村千鶴と申します。」
「え?私?」
「男でも私って使うやついるだろ?」
馬鹿にするように答える真弘。
「あ!そっか。」
「俺は藤堂平助。よろしくな。」
「藤堂平助って、新選組最年少の!?」
「え?ああ。」
「おい、珠紀これ絶対・・・。」
「タイムスリップってやつですよね?」
「お、おう。」
「あの・・・。とりあえず、お風呂沸いているのでどうぞ。」
いきなり2人の後ろから、先ほどの女の子が現れた。
「あ、この子は・・・。」
「言蔵美鶴と申します。」
「私は雪村千鶴と申します。」
「俺は藤堂平助。」
「あの、少しお尋ねしますが、お2人は夫婦なのですか?」
「え?美鶴ちゃん?」
「美鶴、こいつら男だぞ?」
また馬鹿にするように言う真弘。
「いや、その・・・まだそういう関係じゃ・・・。」
「まだ?そうなんですか?どうなさいます?一緒の部屋にしたままでもよろしいですか?」
平助は千鶴を見る。
「・・・はい。」
平助は少し驚いた様子で千鶴を見ていた。
「え?千鶴さんって女だったの!?」
「気付いていなかったのですか?」
「う、うん。」
珠紀と真弘は頷いた。
「大丈夫だよ。俺も最初土方さんが言うまで気付かなかったし。」
「それでは私は、食事の準備がありますので。」
美鶴はその場を離れて行った。
「あの・・・今、私たちの村では鬼斬丸の件で大変な時なんです。2人に何かあっては大変なので、ここにいてくださいね?」
「はい。」
「平助君、お風呂いい・・・!平助君!!もしかして・・・。」
部屋の真ん中で平助は苦しそうに蹲っていた。
「大・・丈夫。」
「駄目だよ!っつ・・・私の血を・・・!」
「・・・ごめんな。・・千鶴。」
「ううん。平助君が生きててくれるなら、私何でもするよ?」
「ありがとう・・・。」
光が2人を包み込む。
「真、真弘先輩?!何覗いてるんですか?」
「ちが・・・うっ!!」
「な、何?!」
光が溢れ、次第に収まっていった。しかし、そこには2人の姿は無かった。
「戻って行ったみたいですね。」
「ああ。」
珠紀は2人に出会ったきっかけの本を開く。そこには、『2人は無事、山南さんの元へ行き説得はうまくいかなかったが、最後に昔の山南さんに戻り、羅刹の国は創られずに2人は静かに暮らしていった』と書き綴られていた。
「私たちも諦めずに玉依姫として覚醒できるように頑張りましょう!」
「それでこそ珠紀だな!」
2人は自分たちの未来のために歩き出したのだった。
end
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