鴉取 真弘と春日 珠紀
私は暖かいものに、包まれていた。

「・・・・・あーあー、なんだよ。ずいぶん疲れやがって」

真弘先輩の声が優しく聞こえる。

「・・・・・寒く、ないです」

私はそう呟く。眠くて、全てがぼんやりとしてて、何が起きてるのかよくわからないけど、真弘先輩に包まれている気がする。

・・・・・あったかくて。なんだかね。真弘先輩。

「なんだか、繋がってるね。私たち」

私が呟くと、先輩は顔を赤くして、視線をそらす。

けれど、なんだか、先輩は優しく笑っていて。

「悪かったよ。心配させた。つらかったよな。確かにあきらめるとか、俺には似合わねえよ。・・・・・・一緒に考えるか。どうにかする方法をさ」


真弘先輩はそう呟く。

外は寒いはずなのに、私は真弘先輩に包まれていて、とても暖かだった。

明日はきっと、また大変な一日になるんだと思う。

絶望したくない私たちは、あきらめるのではなく、希望を探さなければいけない。

それはあきらめることや、ただ自分の身の上を嘆くことよりずっとつらくて、大変なことで、でも絶対に私たちはそうするべきだと思う。

けれど、それは明日の話にしよう。

今は全て、今だけ全て忘れて。先輩の宵闇のような黒い羽に包まれて――。

「ゆっくり寝ろよ。今日のおまえは、もう十分頑張った。今はゆっくり休め。俺がそばで、見守っててやるから」

真弘先輩の静かな声が聞こえて、私は眠る。静寂と冷たい空気の中を、

先輩の暖かな羽に抱かれて。
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