鴉取 真弘と春日 珠紀
一陣の風が、私の横を通り抜けたのを、私は感じた。

ドガァアアアアアアン!

それはそのままツヴァイの体に激突し、凄まじい衝撃と共に、ツヴァイを吹き飛ばした。

暗い雲を払いのける風のように。

その人は現れる。

「よく吐いた。珠紀。俺の女だけのことはある」

その人は言う。私を、全ての災厄から守るように立ち、死神をじっと見つめて。

その人は、手には真空の刀を持ち、体中に力をみなぎらせている。

体中に文様が浮かび上がり、背中に黒い翼を持つ。

「・・・・・真弘、先輩」

来て、くれた。

「なぜ、おまえがここにいる」

まるで、何事もないかのようにツヴァイは言う。

「バカじゃねえのか。こんだけでかいエネルギーが現れりゃ、誰だってここに来るだろうよ」

真弘先輩は映画の悪役のようにニヤリと笑って、そう言う。

「・・・・・・やはり、死の匂いが、消えている。何があった。おまえに」

ツヴァイは鎌を引き、じっと真弘先輩を見つめる。

「別に、何も」


真弘先輩は一瞬だけ私を見て、それから、再び死神を見つめる。

「守ることの意味を、知っただけだ」

「・・・・・せんぱい?」

「鬼斬丸を抑えておくことが、できるか?それだけに集中してろ。俺はあのクソ死神やろうをぶっ飛ばしておまえを守る」

真弘先輩は私に向かって、そう呟く。根拠のない絶大な自信がそこにあった。

相手はツヴァイ。あのアインさえその刃に下し、【死】そのもののように全てに暗黒を振りまくような。

死神。

けれど真弘先輩はまったくひるむことなく。戦いを挑もうとしていて、私は真弘先輩に絶対の信頼を置いていたから。

返事なんて、決まったる。

「・・・・・・抑えてみせるよ」

真弘先輩はゆっくりとうなずいた。その答えを最初から知っていたように。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。